質疑の要約
1. 米の需給と価格
- 令和7年産米は生産量747万トン、令和8年6月末の民間在庫は221~234万トンと高水準見込み。
- 供給過剰感がある一方、過去の集荷競争による高い集荷価格が流通段階に残り、米価高止まりが続いているとの分析。
2. 輸入米増加への対応
- 米価は市場で決まるとの原則を踏まえつつ、需給安定を通じた価格安定を重視。
- 食料システム法に基づくコスト指標で合理的な価格形成を目指す。
- 輸入米対抗策として、生産・流通コスト低減、多収品種・スマート農業、産地と実需者の直接取引を推進。
3. 国内主食用米の需要喚起
- 輸出や米粉に加え、国内主食用米の需要拡大が最重要との問題提起。
- 大臣は、過去の消費拡大施策の限界を認めつつ、多様な価格帯・ニーズに合った国産米供給で、輸入米に奪われた市場の奪還を目指す姿勢を表明。
4. 農業構造転換集中対策(5年・1.3兆円)
- KPIは設定されているが、年度別のロードマップ提示を求める指摘。
- 政府は、KPI進捗を毎年点検・公表する枠組みで対応すると説明。
5. KPI対象外(中小規模農家)への配慮
- 大規模化・生産性向上KPIに漏れる農家も食料安全保障を支える重要な存在。
- 政府は、平均生産コスト低減や付加価値向上(ブランド化等)、中山間地域支援で全体の底上げを図る方針。
6. 多面的機能・生物多様性(ネイチャーポジティブ)
- 水田の生物多様性保全は地域・産業全体に波及効果。
- 「みどりの食料システム戦略」や多面的機能支払い等を通じ、環境と調和した農業への予算確保に取り組む決意を表明。
米は余るのに値は下がらない“食卓のねじれ”をほどく鍵
在庫は積み上がり、供給過剰感さえある。ところが店頭の米価は、すんなりとは落ち着かない。国会審議で語られたのは、この“余っているのに高い”というねじれの正体が、生産量だけではなく、過去の不足感が呼んだ集荷競争と、その高値が流通段階に残る構造にあるという見立てだった。市場で価格が決まるという原則を掲げながらも、暮らしの実感としての「高止まり」が続く限り、政策は説明責任を免れない。
そこへ輸入米の増加が、静かに圧力をかける。多様な価格帯の需要がある以上、国産米が応えきれなければ市場を奪われる——議員の危機感はそこにあった。政府側は、食料システム法のコスト指標を手がかりに「消費者にも理解される合理的な価格形成」を目指すという。だが、指標が整うだけでは棚の前の選択は変わらない。生産・流通コストの低減、多収品種やスマート農業、産地と実需者の直接取引といった処方箋は並ぶものの、要は“国産で、適正価格で、必要な量を”という当たり前をどう実装するかである。
さらに議論は、5年・1.3兆円の構造転換策のKPIに入り、そこからこぼれ落ちる中小規模農家の位置づけへ、そして水田が担う多面的機能や生物多様性へと広がった。稼げる農業だけでは測れない価値——川の生態系を支え、地域の産業に波及する田んぼの役割——を、社会がどう支えるのか。米価のねじれをほどく糸は、価格の上げ下げだけでは足りない。食卓の選択、流通の設計、農村の公共性。その全部を一つの文脈で語れるかどうかが、次の一手を決める。
委員会質疑 文字起こし
委員長 ただいまから農林水産委員会を再開いたします。休憩前に引き続き農林水産に関する調査を議題とし、令和8年度の農林水産行政の基本施策に関する件について質疑を行います。質疑のある方は順次ご発言願います。
籠島 国民民主党・新緑風会の籠島彰宏です。本日は質問の機会を頂戴いたしまして、委員長、各理事、並びに各委員の皆様に御礼申し上げます。早速質問に入らせていただきます。
1. 米の需給と価格動向について
籠島 米について、民間在庫の本年6月末の予測が221万トンから234万トンといった報道がありました。適正水準からは大きく上振れている状況であり、足元では米が余っているという状況が明らかであると思います。そうした中、一方の米価については、じわじわと落ち着きつつあるものの、まだ米価高騰は続いているといった見方ができる状況だと思います。この状況について、改めて農林水産省としてどのように分析をしているのか、ご教示いただけますか。
山口農産局長 お答え申し上げます。委員ご指摘の通り、令和7年産の主食用米の生産量747万トン、昨日公表いたしました需給見通しでは、令和8年6月末の民間在庫量は221万トンから234万トンと、直近10年程度で最も高い在庫水準になるという風に見通しているところでございます。一方で、令和7年産米につきましては、かねてからの不足感から産地における集荷競争が激化したことにより、作柄ですとか生産量が判明する前に、集荷価格が上昇したと。この集荷価格の上昇に各段階のマージン等が加わった価格で、卸段階、小売段階に至る取引が進められている結果、このような現象が起きているものと考えております。
籠島 ありがとうございます。おっしゃる通り、やはりこの中間の流通業者の段階で高く買ってしまったから安く売れないと、いったような点が今の状況を招いているものと思っております。で、本来ならばこれだけ余っていれば需給バランスの中で、まあ在庫もはけていったはずではあるものの、まあ米価高騰が維持されてしまったことによって在庫が積まれたままになっているといった状況だと思います。
2. 輸入米への対応と国産米の需要拡大
籠島 こうした現状の中で、先ほど進藤委員からの質疑の中にもありましたが、輸入米が大きく増えてきている状況であります。大臣もかねがねおっしゃられているように、米の需要を拡大をさせていこうという取り組みをしている中で、その市場を輸入米に奪われてしまってはやはり世話がないという状況であると思って、やはりこれは問題であると思っております。価格はマーケットで決まると大臣はよくおっしゃられます。それもよく分かります。ただこの価格がこのまま下がるのを待っているのも、これはこれで問題だろうとも思っております。まずこの現状について、どのように分析をしているのかお伺いできますか。
山口農産局長 委員ご指摘の件につきましては、米の価格は需給バランスなど民間の取引環境で決まるものであり、国として関与することは適当ではありませんが、米の需給の安定を通じて、結果として米の価格の安定が図られていくことが基本であるという風に考えております。こうした中で、各生産段階、卸、小売、各ステークホルダーの皆様方のご議論によって、食料システム法によるコスト指標、これの作成が進んできているところであります。このコスト指標によって、流通経費を含めた合理的な費用が明確になることを通じて、生産者の再生産、再投資が可能で、かつ消費者にも理解が得られるような価格水準に落ち着くことを期待しているところでございます。また、委員ご指摘の輸入米の対応につきましては、消費者ですとか、あるいは中食・外食のニーズに応えて、多様な価格帯の米を供給することが重要であると考えています。このため、生産コストの低減に向けた農地の台帳からの基盤整備、多収品種の普及開発の拡大、スマート農業や省力栽培技術の導入。流通コストの低減に向けましては、生産性向上に取り組む産地と実需者の直接取引の推進によって、流通の効率化につなげる実証的な取り組みを支援してまいりたいと考えております。
3. 主食用米の国内需要喚起と大臣の決意
籠島 ありがとうございました。コスト指標のお話もありました。食料システム法が4月から施行だと思います。コストを積み上げていって、最終的に米農家の再生産可能な価格でお米を売っていくと。ただ一方で、それはマーケットが受け入れられるかどうかというのはまた別の話なんだろうと私は思っております。やはりこのコスト指標をきちんと機能させていくためにも、米の需要っていうものをもっとしっかり掘り起こしていかなければならんという風に思っています。大臣から米粉や輸出、こうしたことをよくおっしゃられていると思います。それももちろん私も進めたらいいと思います。ただ実際のこの米のシェアを考えれば、やはり輸出や米粉よりも国内の主食用の方が圧倒的にシェア大きいわけであり、だからこそこの国内の主食用の需要をいかにして掘り起こしていくのかといったことは、やっぱり真っ先に考えなければならないと思います。政府として需要をもっと大きくしていきたい、そうした姿勢で取り組むといったご発言がございました。やはりこの国内の主食用マーケットが減り続けていれば、シェアが大きいわけですから、当然この米全体の需要というのも減少傾向になかなか歯止めはかけられないと私は思っています。国内の主食用米の需要喚起について、これからどういった姿勢で取り組まれるのか、大臣の決意をお伺いできればと思います。
鈴木大臣 まず、我が国の水田農業を維持するとともに、食料安全保障を確保していくためにも、国内で自給可能な唯一の穀物である米について、主食そして非主食を合わせた需要拡大を図っていくことが重要です。私もずっと言っておりますが、米粉、そして輸出、これを新しいマーケットとして取っていくということが基本だろうと思っておりますが、ただ一方で、国内の主食用米、今ご指摘があったんですが、主食用米の需要と言っても、総量はもちろん上にいくか下にいくかっていうのはあるんですけど、様々なニーズがあるわけですよね。そこに対してちゃんとニーズに沿った供給をやれているのかやれていないのかと言えば、現状としてそうではない。その結果として外国産の米を使ってしまっているという現状が一定程度あるわけですから、まずはそこの部分をちゃんと国内生産に振り向けていく。外国産に奪われてしまっているところを取り戻しにいくという、この多様な価格帯の米を安定供給できる体制を作っていくという意味で、まずは一歩目があるんだという風に思います。こっから先は大変私は難しいという風に歴史が証明していると思いますのは、ずっと農林水産省もいろんなプロジェクトをやって、国内の主食用のお米の消費拡大っていうのをやってきたわけです。「朝起きたら食べましょうプロジェクト」みたいなやつとか、「なんとか日本」みたいなやつもやってきたんですけど、結局じゃあそれで主食用のお米の需要が拡大をした結果が出たのかどうかと言えば、現状として米価が高くない時代であったとしても、なかなか国民の皆様の消費行動を変えるっていうところまでは至らなかったんじゃないかと思います。かなり巨額の予算を投じてそうした運動をしてきたわけですから、同じことをまたやっても結果が出るとは限りません。ですから、どういうやり方をやったら今度は本当に委員がおっしゃるような主食用の需要が増えていくんだ、国民の皆様の食生活がちょっと米にシフトしてくるんだってことが可能なのかは、ぜひむしろアイデアがあったらご教示いただければいいものはしっかり取り入れさせていただきたいという風に思います。
4. 農業構造転換集中対策とロードマップ
籠島 ありがとうございます。私も農水省におりましたから、様々な取り組みがあったことは承知しております。所得補償を入れれば、補助金の波及効果ありますから、価格競争力という点ではもっと勝っていく部分があると思っています。次に、農業構造転換集中対策についてお伺いします。令和7年度から令和11年度まで5年間で国費1.3兆円を投じる一大プロジェクトであります。ゴールについてお伺いしてみたところ、これは基本計画のKPIであるということでありました。5年間1.3兆円つけてやるわけですから、せっかくですからロードマップくらいは示したらどうなのかという気がしております。各年度どこまで引き上げていって、だからそれぞれの年度でどれくらいの予算が要るんだといった精査も、対外的に見ている限りではなかなかできていない。今からでもいいので、ぜひこの5年間のロードマップ、せっかく作ってみてはいかがでしょうか。
押切総括審議官 お答えをいたします。農業構造が変化をする中、農業生産の維持拡大を図り、食料安全保障を確保していくということで、食料・農業・農村基本計画に基づきまして、令和7年度からの5年間で農業の構造転換を集中的に押し進め、生産性の抜本的向上を図るということにしてございます。委員ご指摘のロードマップそのものではございませんけれども、基本計画では5年後の目標とそれに向けて施策の有効性を示すKPIを設定をしておるころでございます。その目標の達成状況ですとか、農業構造転換集中対策を含めたKPIにかかる施策の進捗状況などを毎年確認をするということで、今回の基本計画からスタートする仕組みということでございますので、こうした取り組みを通じて構造転換に資するものになるように努めてまいりたいという風に考えてございます。
5. KPIの対象から漏れる農家への視点
籠島 ありがとうございます。ぜひその毎年の点検も、対外的に分かる形で示していただけたらなという風に思います。そのKPIなんですけれども、米について絞らせていただきます。米のKPIを見てみると、「水稲作付面積15ヘクタール以上の経営体面積シェアを3割から5割に引き上げる」「スマート農業技術を活用した面積の割合を20%から50%に引き上げる」といったKPIであります。KPIを達成するために5年間かけて1.3兆円の中で支援をしていくというプランかと思いますが、一方で目標から漏れる残りの半分50%の分野も、日本の食料事情を守っている大切な役割を担っている方々であります。今回のこの対策の、KPI50%に漏れる方々のことをどう捉えていらっしゃるか、ご教示をいただけますか。
鈴木大臣 まず、ご指摘の基本計画の稲作関連KPIについては、米を含む土地利用型作物の経営体数が2030年に半減をするということが見込まれる中で、需要に応じた生産を推進し、主食である米の需給と価格の安定を図るため、生産コストの抜本的な低減を図る必要があることから、15ヘクタール以上の経営体の面積シェアが5割とするなどについてKPIとして定めたものであります。また基本計画では、中小の規模も含めた全経営体の平均の米の生産コストを60キロあたり1万3000円まで低減するというKPIもあわせて掲げているところでありまして、構造転換集中対策を通じて大規模経営体と同様に生産性向上に向けて取り組んでいくことを期待しております。
籠島 ありがとうございます。50%の範囲外の方々も生産性向上に取り組めるような支援を行っていくということだと思います。ただやはり、必ずしも生産性向上だけが食料事情を守っているわけではないということは、私はあえて申し上げておきたいという風に思っています。米農家の平均年齢は上がっているわけですから、時が経てば引退される方々も増えていく。中小規模の方からやっぱり引退されていくだろうと想像される中で、時が経っていくと分母が減るわけですから、必然的にこの大規模の方の割合もまあ上がっていくことにはなるわけです。ただそういったことに頼らずに、生産性上げられるところは上げてほしいし、大規模化できるところはしてほしいですけれども、それができない部分に対しての取り組みっていうのもやっぱり力を入れていっていただきたい。生産性向上であったり、収益拡大に寄らないような部分も、サボっていっていいって言っているわけじゃないです。寄らないような部分も守っていかないと今の日本の食料事情は守れないと思っています。この点について見解をお伺いできたらと思います。
鈴木大臣 今の「寄らない部分」というのがちょっとどこの部分なのかがちょっとよく分からないんですけども。まず、食料・農業・農村基本法にある通り、農業の持続的な発展を図る上では、生産性向上だけでなく付加価値の向上も極めて重要だという風に考えております。このため品種保護によるブランド化や、きめ細かなマーケティングなどによる付加価値の向上などの取り組みも進めることで、「稼げる農業」を創出をしたいという風に思います。これに加えて、平地と比べて条件が不利な中山間地域については、中山間地域等直接支払いなどによって、これ今見直しをこれから検討しますけど、しっかりと支えていくということが必要かと思います。
6. 多面的機能と生物多様性保全(ネイチャーポジティブ)
籠島 ありがとうございます。高付加価値化、ブランド化も大切です。ただ、できない人たちも日本の食料事情を支えているわけです。例えば防衛産業ありますが、産業として稼げるからやっているわけではなくて日本を守るためにやっている。稼げる農業だけが別に正解ではないと思っています。稼ぐことに限界がある農家に対しての支援ということで、先ほどの中山間等の直接支払いも言及をされました。食料安全保障がもたらす機能であるとか、水田の多面的機能がもたらす機能であったりとか、そういったものももっと幅広く捉えて支援をしていくべきなのではないかという風に思っています。多面的機能の中で一つ重要な柱が「生物多様性の保全」です。水田というのは川から水を引いてくる流れで、水生生物の住処になっています。田んぼが適切に維持されていると、川の生態系というものが適切に維持をされます。そうすると河川環境全体が維持向上されますので、農業としてもいいし、加工域とか沿岸域の産業も豊かになる。巡り巡って地域の産業も豊かになる。今年は生物多様性条約の総会が行われます。いわゆる「ネイチャーポジティブ」の取り組みです。世界的に今2030年に向けて、昆明・モントリオールの生物多様性枠組み。これを実現をするための機運が高まりつつある。農水省も、ぜひこのネイチャーポジティブの機運もしっかり捉えて予算要求してもらいたい。「みどりの加速化GXプラン」がこの秋から始まったとお伺いをしておりますが、ぜひこの中でもしっかりこの生物多様性保全、ネイチャーポジティブの文脈もしっかり捉えて予算要求をぜひ実現をしていただきたい。それによって水田の生物多様性保全の効果も守れるような施策を実現をしていただきたい。大臣の決意をお伺いできればと思います。
鈴木大臣 今、委員からありました生物多様性の保全や地球温暖化の防止といった環境との調和、そしてこの農業に関連した共同活動や中山間地域での農業生産による多面的機能の維持発揮を促進していくということは重要であるという風に考えております。なかなか現実としてそれが品物の対価に反映されにくいということも現実だろうという風に思っておりますので、我々としては、この農業構造転換集中対策ばかりではなくて、この「みどりの食料システム戦略推進総合対策」や「多面的機能支払い交付金」、「中山間地域等直接支払い交付金」など、多角的かつ中長期的な視点に立ち予算をしっかり確保してまいりたいと思います。
籠島 ありがとうございました。質問を終わります。

