質疑の要約
1. 主食(米)の定義と政府の役割
- 質問: 主食とは国家にとってどのような存在か。また、食糧法改正により生産基盤や安定供給はどのように確保されるのか。
- 答弁: 主食(米)は国民生活に不可欠であり、食料安全保障の観点から需給の安定が重要である。国が責任を持って需要に応じた生産を推進するため、法改正において「米の持続的発展(需要開拓・輸出促進・生産性向上)」を政府の責務として明記し、生産基盤の維持と安定供給を実現する。
2. 輸入米への対応と米政策の前提
- 質問: 米価高騰に伴う輸入米の増加は従来の米政策の前提を覆した。政府はこの変化をどう分析し、改正案でどう対処するのか。備蓄制度の運用で対応可能か。
- 答弁: 民間輸入の定着による国内市場の浸食は懸念している。そのため、改正案では政府主導でコスト低減や国内外の需要創造(業務用米・米粉など)を進める。供給不足時には、民間備蓄制度の創設により機動的に備蓄米を放出し、国産米の需給と価格の安定を図る。
3. 国民の不安払拭と食料安全保障
- 質問: 米不足による国民の不安をどう払拭するのか。単なる需給調整を超え、食料安全保障の観点から改正案をどう捉えているか。
- 答弁: 需要に応じた生産の推進、流通実態の的確な把握、民間備蓄制度による機動的放出の3点により安定供給を確保し、不安を払拭する。また、需要減少を前提とした従来の生産調整規定を廃止し、平時からの実態把握と緊急時の対応力を強化することで食料安全保障を確保する。
4. 流通実態の把握と事業者への負担
- 質問: 流通実態把握の対象拡大(外食・中食等)は事業者に新たな負担を強いる。現場の人手不足を踏まえ、負担軽減のためにどのような配慮を行うのか。
- 答弁: 報告対象者を一定規模以上の事業者に限定し、電子申請を導入するなどして事務負担を極力軽減する。今後も現場の意見を聞きながら検討を続ける。
5. 民間備蓄の義務化に伴うコスト負担
- 質問: 一定規模の事業者に民間備蓄を義務づけることは国全体の安全保障のためであり、費用を事業者に負わせるべきではない。政府の認識はどうか。
- 答弁: 備蓄米の円滑な保有のため、政府が必要な財政上の措置等を講じる旨を法案に規定している。具体的な運用支援内容は、今年度実施する実証事業を踏まえて検討する。
6. 「需要に応じた生産」の定義と矛盾
- 質問: 需要の増減に関わらずバランスを取るはずの「需要に応じた生産」の規定に、「需要拡大を行う」という矛盾があるのはなぜか。拡大できなかった場合の責任や影響はどうなるのか。
- 答弁: 「需要に応じた生産」とは、多様な用途の米について国内外の需要を創出した上で、それを満たすよう生産することである。基本計画で2030年の生産目標を増枠しており、政府が前面に立って販路開拓やプロモーションを強化し、積極的に需要開拓に取り組む。
7. 需給見通しの実態との乖離への対応
- 質問: 米不足の一因は見通しと実態の乖離である。今後、大きな乖離が生じた場合にどう検証し、どのような措置を講じるのか。
- 答弁: 昨年9月に需要見通しを幅を持たせた設定に見直した。さらに改正案による流通業者(加工・中食・外食)の実態把握から得られた情報を需給見通しに逐次反映させることで、実態との大きな乖離を防ぐ。
かごしま彰宏議員 質疑
国民民主党・新緑風会のかごしま彰宏です。
ただいま議題となりました、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案について、会派を代表して質問いたします。
日本の主食である米については、需要は減るものだという前提のもと、国の責任で供給を絞ることで需給のバランスを取り、米価を安定させようとしてきました。しかし、需給バランスや価格を議論するとき、本当に守るべきなのは米の生産基盤であり、国民への安定供給です。
そんな中、想定外に需要が増加し、供給が不足した、その結果起きたのが米不足です。米不足は多くの国民に混乱を与え、今後も足りなくなるかもしれないという不安を抱かせました。食糧法改正にあたっては、今後は、いかに米の需要に応えていくのか、いかに米不足に対する不安を払拭するのかを明確に打ち出していく必要があります。
だからこそ、今回の食糧法改正は、国は主食にどこまで責任を負うのかという根本的な問いに答えるものであるべきです。そのような基本認識のもと、全問い、農林水産大臣に質問いたします。
まず、食糧法は、主食の需給及び価格の安定を図るための法律です。改めて、主食とは一体何でしょうか。私は、主食とは主に消費されていることのみならず、どのような環境、国際情勢であっても、国民の食卓に安定的に届けなければならないものだと考えています。政府は、主食とは国家にとってどのようなものであり、主食を守るにあたり、政府はどのような役割を果たすべきであると認識しているのでしょうか。また、食糧法改正することによって、主食の生産基盤や安定供給はどのように確保されると考えているのか伺います。
次に、輸入米について伺います。米価が高騰した際に起きたのは、輸入米の増加です。1キログラムあたり341円の枠外関税を払っても、国産米よりも安いという状況は、輸入米は入ってこないというこれまでの米政策の前提を覆しました。食料システム法も施行されましたが、生産コストを米価に転嫁する上でも、輸入米価格がひとつの指標となります。また、今後、米の供給が不足する事態における変動要因として、輸入米の動向を考える必要が生じます。米価が上がれば輸入米が入ってくるという前提の変化に対し、政府はどう分析し、本改正案においてどう対処していますか。備蓄制度の機動的運用で輸入米の増加に対処できると考えているのかどうかを含め、見解を伺います。
次に、食糧法の目的について伺います。食糧法第1条には、「主要食糧の需給及び価格の安定を図り、もって国民生活と国民経済の安定に資することを目的とする」と規定されています。しかし、米不足では、多くの国民が、店頭から米が消え、価格が高騰するという事態に直面しました。国民が、当たり前に手に取れると思っていた主食が、脆弱なバランスの上に成り立っていたということを突きつけられたのであります。だからこそ、今回の食糧法改正案は、需給バランスや価格という指標の先にある、国民への主食の安定供給と国内の生産基盤を守ること、そして、また米が足りなくなるかもしれないという不安を払拭することに答えるものであるべきです。政府は、この法律によって、どのようにそれを実現しているのでしょうか。見解を伺います。
次に、食料安全保障について伺います。近年、気候変動の影響による不作、国際情勢の緊迫化など、食料安全保障をめぐる様々なリスクが顕在化しています。こうした中で、今回の食糧法改正案は、食料安全保障をどのように捉え、その確保にどのように資するものとなっているのでしょうか。単なる需給調整の枠組みを超え、食料安全保障という観点からの政府の認識を伺います。
次に、流通段階における実態把握強化について伺います。今回の法改正では、流通実態把握の報告対象となる事業者の規模が拡大されます。米騒動を振り返れば、その必要性は理解します。一方で、こうした措置は、事業者に、新たな人的負担やコスト負担を求めるものです。特に米の流通は、多様な事業者によって支えられており、現場では人手不足も深刻化しています。政府は、こうした負担をどのように認識しているのでしょうか。また、制度の運用にあたり、事業者負担を最小限とするために、どのような配慮を行うのかお答えください。
さらに、民間備蓄について伺います。今回の法改正では、一定規模以上の事業者に対し、一定水準以上の民間備蓄を義務づける措置が盛り込まれました。しかし、備蓄を行うということは、品質保持や在庫管理、そもそも倉庫建設など、様々なコストを事業者に負わせることになります。しかもその目的は、個別企業の利益のためではなく、国全体の食料安全保障のためであります。そうであるならば、そのかかりますコストを事業者に負わせるべきではありません。政府として、民間備蓄に伴う追加的な負担についてどのように考えているのか、特に、事業者負担を求めるべきではないという観点から、認識を伺います。
次に、需要に応じた生産と、需要拡大について伺います。生産調整を前提とした過去の米政策においても、いわば減る需要に応じた生産を行うことにより、米価を維持する政策が取られてきました。今回、需要が減るという前提を見直し、需要の増減に関わらず需給バランスを取るということを、需要に応じた生産の考え方としていると理解しています。一方、改正案第5条第4項には、「政府は、需要に応じた生産が可能となるよう、需要開拓や輸出促進等の措置をとる」と書いてあります。つまり、食糧法改正案においては、需要の増減には関係ないはずの需要に応じた生産を推進するために、需要拡大をするという、矛盾をはらむ規定となっています。
需要拡大には賛成です。一方で、条文上このような矛盾が生じるのはなぜでしょうか。それは、条文上、需要に応じた生産の定義がなく、そもそも需要に応じた生産が向かう方向性が、曖昧なまま残されているからです。需要に応じた生産とは、結局何なのでしょうか。需要拡大策を取るとはいいますが、需要拡大ができなかった際に、需要に応じた生産に与える影響はどのようなものでしょうか。また、需要拡大に対して、政府はどの程度の責任を持つのでしょうか。見解を伺います。
合わせて、需要に応じた生産における政府の責任について伺います。改正案第5条では、需給見通し等を参考として、生産者が主体的に需要に応じた生産を行うことが規定されています。加えて、JA等の団体や地方公共団体にも、必要な助言や情報提供などが求められています。他方、政府の措置については、需給バランスを取る中での役割は見通しの公表にとどまります。しかし果たして、見通しを示すことだけが、政府の役割なのでしょうか。見通しを示せば、個々の生産者が自分の判断で適切に需要に応じた生産ができると考えているのでしょうか。それとも、政府が生産基盤の維持や需要変動への対応も含めて責任を負うのか。政府はこの需要に応じた生産の中で、自らの役割をどのように位置づけているのか、見解を伺います。
最後に、需給見通しについて伺います。需給見通しは、需要に応じた生産を支える重要な参考指標として位置づけられています。しかし、米不足の要因のひとつは、需給見通しが実態と乖離したことです。見通しである以上、完全に当て続けることは不可能です。だからこそ問題は、見通しを外したときにどう対応するかです。今後、需給見通しと実態に大きな乖離が生じた場合、政府はそれをどう検証し、どのような措置を講じるのか、見解を伺います。
主食を守ることとは、需給の安定や米価の維持を図ることだけではありません。将来にわたって生産できる農地を守り、人を守り、地域を守り、そして国民が不安なく米を手に取ることのできる、その環境を守ることであります。私は昨年の混乱によって、改めてその原点を突きつけられたのだと思います。今回の法改正が、そうした国民の食をつかさどる国家としての責任を果たすための第一歩となるのか、そのことを確認するため、政府の率直な答弁を求め、私の質問といたします。
ご清聴ありがとうございました。
鈴木憲和農林水産大臣 答弁
かごしま彰宏議員のご質問にお答えいたします。
主食の役割の認識とその生産基盤、安定供給の確保についてお尋ねがありました。
主食とは、国民の日々の生活に欠かせない貴重な食べ物です。特に我が国の主食である米については、食料安全保障の観点の、あ、食料安全保障の確保の観点から、え、需給の安定を図ることが重要と考えています。そのためには、国が責任を持って生産者の需要に応じた生産を推進していくことが必要です。
そのため本改正案では、引き続き需給見通しの作成など政府が講ずる措置を基本方針に規定するとともに、新たに第5条第4項を設け、政府の責務として米の生産の持続的発展を図るため、需要開拓、え、輸出促進、生産性向上などを講ずる旨を明記したところであり、政府として責任を持って米の生産基盤を維持し、安定供給を実現してまいります。
次に輸入米の動向についてのお尋ねがありました。
民間貿易による米の輸入拡大については、生産量が需要量に対し不足したことにより、国産米の価格が上昇し、輸入米の方が安くなったためと考えており、今後民間輸入が定着し、国内市場が奪われかねないことを懸念しています。
今般の改正法案では、政府の責務として新たに生産性の向上や需要開拓を位置づけており、農地の大区画化や多収品種の導入などによる生産コストの低減を推進するほか、業務用米、米粉用など、え、多様な用途の米について政府が前面に立って国内外の需要を創造してまいります。また合わせて民間備蓄制度の創設を盛り込んでおり、米の供給不足時には機動的に備蓄米を放出することで国産米の需給の安定とこれを center、あ、これを通じた価格の安定を図ってまいります。
次に、米の安定供給の確保と供給に関わる国民の不安の払拭についてのお尋ねがありました。
本改正案では、生産者による需要に応じた生産を進めるとともに、多様化する流通実態を的確に把握するため、え、外食、中食、加工業者を届け出対象に追加する、え、民間事業者に対し在庫数量や、え、取引数量などの定期報告を義務づけるなどの措置を講ずることとしております。また米の供給不足が生じた場合に備蓄米の機動的放出を可能にするため、民間備蓄制度を創設することとしており、これらの取り組みにより米の安定供給を図り、え、国民の不安払拭に努めてまいります。
次に食料安全保障の確保と食料法改正の関係についてのお尋ねがありました。
食料安全保障を確保するためには、我が国の主食である米に関して、国内外の需要を創出した上で、その需要に応じた生産を推進していくこと、え、多様化する流通実態を平時から的確に把握し、供給不足が生じた場合には迅速に消費者まで米を供給できる体制を構築することが必要であると考えております。
このため、今般の改正法案において、需要減少を前提とした生産調整にかかる規定を廃止し、需要に応じた生産が可能となるよう、米の需要開拓、輸出促進などの政策を講ずることを政府の責務として位置づけるほか、多様化する流通実態を的確に把握するため届け出対象の追加、定期報告の義務づけなどの措置を講ずるとともに、え、備蓄米の機動的放出を可能とするため民間備蓄制度を創設することとしております。これらの取り組みを着実に実施することで、食料安全保障の確保を図ってまいります。
次に流通実態の把握に関する事業者の負担軽減についてのお尋ねがありました。
新たな届け出定期報告の実施にあたり、事業者の皆様の負担を極力軽減する観点から、定期報告の対象者は一定の規模以上の方に限ることや、報告方法も電子申請を導入することなどの対応を行うこととしており、引き続き現場のご意見も伺いながら検討を進めてまいります。
次に民間備蓄に伴う追加的な負担についてのお尋ねがありました。
民間備蓄にかかる事業者の負担については、備蓄米の保有が円滑に行われるよう政府が必要な財政上の措置等を講ずることを改正法案に規定しています。え、民間備蓄の具体的な運用支援内容については、今年度実施する民間備蓄にかかる実証事業等を踏まえた上で検討してまいります。
次に需要に応じた生産についてお尋ねがありました。
需要に応じた生産とは、主食用米、米粉用米、輸出用米といった多様な用途の米について、国内外の需要を創出した上で、その需要を満たすよう生産することを意味しています。昨年4月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画では、2030年の米の生産目標を、2023年の791万トンから818万トンに増加させることとしています。今般の改正法案では、第5条第4項において政府が需要開拓や輸出促進などの政策を講ずることを位置づけており、え、多様な価格帯の米の供給の支援、現地スーパー、あ、現地系のスーパーやレストランなどの、え、新たな販路の開拓、え、米粉、米粉加工品などのプロモーション強化等を通じ、政府自らが前面に立って米の需要開拓に積極的に取り組んでまいります。
次に需要に応じた生産における政府の役割についてお尋ねがありました。
今般の改正法案においても引き続きご指摘の需給見通しの作成など政府が講ずる措置を規定しています。また新たに第5条第4項では、政府は米の需要開拓、輸出促進、生産性向上に関する政策、その他関連政策を講ずることにより米生産の持続的な発展を図るものとする、と明記したところであり、政府が責任を持って需要に応じた生産に取り組んでまいります。
さらに米生産の、え、持続的な発展を図るため、需要開拓や輸出促進に加え、農地の大区画化や新品種開発、スマート農業の導入等による生産性の向上、え、収入保険などの経営安定対策などの政策を合わせて講じてまいります。
次に需給見通しについてのお尋ねがありました。
昨年9月、需給見通しについては直近の動向等を踏まえた精緻なものとするため、需要見通しを幅を持って設定した上で、え、生産見通しは需要量の幅の上位の値で設定するよう見直ししたところであります。
また今般の改正法案では、え、加工、中食、外食事業者を届け出対象に追加すること、民間事業者に対し、在庫数量や取引数量を定期的に報告いただき、流通業者の需要実態を幅広く把握することなどの措置により得られた情報を、え、需給見通しに反映するよう逐次見直しを行い、大きな乖離が生じないようにしてまいります。

