国民民主党の空室税は「新たな増税」を生む #減税新聞

国民民主党の空室税は「新たな増税」を生む #減税新聞
今回は、国民民主が法案提出した「空室税」が新たな増税を呼び寄せる構造について解説します。

国民民主党が、「空室税法案」を衆議院へ提出しました。
一見すると「空いている家に税金をかけて市場に流通させる」というシンプルな構図に見えます。
しかし、社会はそんなに単純なものではありません。

■空室税の意図と「配慮規定」
「空室税」の趣旨は、投機的な不動産所有に一定のコストを課し、長期間放置される物件を減らすというものです。
しかし、空室といっても理由は千差万別です。
生活上の事情でやむを得ず不在となるケースは、都市部・地方を問わず日常的に存在します。
だからこそ国民民主党提出の「空室税法案」も、この点を考慮し、「やむを得ない事情がある場合は課税しない」という配慮規定を設けています。
しかし、この「配慮規定」こそが法案の構造的欠陥です。
なぜなら、この規定があることで、行政の負担やコストが跳ね上がるからです。

■役所に降りかかる「新たな巨大業務」
空室が「やむを得ない事情」かどうかを判断するために、自治体には次のような確認が必要となります。

〇本当に空室なのか
電気・ガス・水道の使用量、郵便物の滞留、近隣への聞き取り、住民票や登記情報など複数データの照合。
〇空室が一時的か長期か
単身赴任、長期出張、長期入院、留学など、数カ月〜数年の不在に対する「空室」の線引き。
〇やむを得ない事情に該当するか
事情聴取、書類提出、証明書取得などの調査および審査。
〇申告内容が虚偽ではないか
形式的な理由による回避を防ぐため、虚偽確認プロセスは不可欠。

これらは当然すべて自治体が行うことになります。
役所の現場にとっては「新たな巨大業務」が降ってくるようなものです。

■実際には判断が極めて難しいケースばかり
しかし生活実態は画一的ではないがゆえに、法案が前提とする「空室=投機目的」という図式と現実は、必ずしも一致しません。
たとえば、

・高齢の親が長期入院し、退院後に戻る予定が施設入所になる
・相続した家を片付けながら時々使っている
・二拠点生活で週末だけ利用
・長期出張で半年〜1年不在
・介護や治療のため頻繁に家を空ける必要がある

こうしたケースは形式的には「空室」でも、実態としては生活上の正当な理由があります。

■虚偽申告とのいたちごっこが始まる
また、「やむを得ない事情」の判断は、本人の申告が基礎になります。
すると当然、「投機目的」であったとしても

・「介護で家を空けている」
・「二拠点生活だ」
・「長期出張だ」

などの形式的な言い訳で回避しようとする人が現れます。
結果、自治体は全ての対象者に次のような証明を求めざるを得ません。

本当に介護なのか(証明書の提出)
本当に二拠点生活なのか(滞在頻度の確認)
本当に治療なのか(入院証明書等の提出)

こうしたプライバシーへの領域への過剰な介入は避けられず、行政・住民双方にストレスと手続きの手間を生む仕組みとなります。
しかし、一般住民がそうした証明作業を強いられる一方で、投機的な不動産投資家は、課税分の価格転嫁や法人名義・海外法人の利用、短期貸しなど、ありとあらゆる回避策を模索するので「いたちごっこ」となるでしょう。
つまりこの空室税が生み出すのは弊害ばかりであり、本来の目的達成は限りなく困難と言えるのです。
もし投資家がこの税を黙って支払ったり、投機を諦めると信じているなら、詐欺に気を付けた方がいいと思います。

■空室税は“新たな増税の種”である
空室税が生む最大の弊害が、監視強化と事務負担によって発生する「行政コスト」です。

・空室確認の調査費
・住民への事情聴取
・電力・水道会社とのデータ照合
・虚偽申告対策の事務コスト
・不服申し立てへの対応

これらは莫大な行政コストとして積み上がります。
結果として起こり得るのは、「空室税を維持するために、空室税以外の税収を使う」という本末転倒の事態です。
「空室税」は問題を解決するどころか、自治体財政を圧迫し、結果的には別の税金での穴埋めを招きます。
つまり空室税とは、「新たな増税の種」なのです。
そしてその「新たな増税」の対象が、あなたにならないとは限りません。
こうした弊害は海外でも指摘されています。
たとえば以前紹介した「バンクーバーの空き家税」でも、増税撤回の理由として、

・虚偽申告の増加
・それに伴う監視コストの肥大化

が挙げられています。
「空室税」が思う通りに機能するほど、社会は単純ではありません。
「金持ちはズルい」「外国人投資家から税を取れ」と安易に賛成すれば、いずれ自分の首を絞めることになります。
全ての増税に反対しましょう。

One of the great mistakes is to judge policies and programs by their intentions rather than their results.
政策を結果ではなく意図で判断することは大きな間違いの一つである
ミルトン・フリードマン

元記事のnoteはこちらです。

【空室税は「新たな増税」を生む──国民民主党提出「空室税法案」の構造的欠陥 2025年12月12日 】
https://note.com/tax_cuts_news/n/na6687dada814
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